この男、偽装カレシにつき

胸がドクンと波打つ。



どうしたの、私…。
どうしてこんなに胸が高鳴ってんの?


傷心のときって、こんなに心が揺れるものなの?
それとも本当に、私って気が多いのかな?


どうしよう。
センパイの顔を真っ直ぐ見れない。
黙ったまま、後を付いて行くことしかできない。


そのとき。
急に大野センパイが足を止めたから、私はその肩にぶつかってしまった。


「どうかしましたか…?」


不審に思ってセンパイの視線の先を見た瞬間、私は息を飲んだ。


だってその先には、橘センパイが壁にもたれるように立っていたから。