この男、偽装カレシにつき

「そんなことより、腹減った。
メシ食いに行くぞ」


橘センパイは突然そんなことを言い出すと、私の腕を強引に掴んで歩き始めた。


そんなことよりって…。
相変わらず自分勝手なオトコだこと!
どうせ、私のスカート丈よりアンタの空腹の方が大事でしょうねーだ。


…つーか。
さっきから、やたらと周囲の視線が気になるんですケド。


すれ違う全ての女子の顔に「何であのイイ男の隣にいるのが、あんなちんちくりんなの?」って書いてあるように見えるのは気のせいではあるまい。


そういえば。
学食での水ぶっかけ事件以来、校内での誹謗中傷がなくなったからすっかり忘れてたケド。


このオトコと一緒にいるだけで、こんなにも注目を浴びるんだった。