この男、偽装カレシにつき

「…昨日どうなったんだよ」


橘センパイは非常階段の壁にもたれながら、ちらりと私に目をやる。


「何が?」


「ばっくれてんじゃねーよ。
俊介と一緒に帰ったんだろ?
浮気者めが」


何じゃそら!
バイトサボって、泣いてる雪乃さんを家に連れ込んでたヤツがよく言うわ!!


思わず突っ込みそうになるのを何とか思い止まる。


マズイマズイ。
センパイは私が、雪乃さんが初恋の君だって気付いてることも、昨日二人でいるのを目撃しちゃったことも知らないんだった。


つーか。
今呼び出したのって、そんなこと聞くため?


自分だって浮気してたくせに、何でそんな不満そうなの?


それじゃあ、昨日大野センパイと何もなかったか心配してるみたいに聞こえるじゃん…。