この男、偽装カレシにつき

私の手のぬくもりに気付いたのか、ゆっくり目を開けたセンパイは、虚ろな視線をこっちに向ける。


やばい。
私きっと、すごく赤い顔してる。
こんなところを見られたら、センパイのことが好きだってバレちゃうよ。


本命のカノジョは作らない上に、自分を好きな女子のことを鬱陶しがる橘センパイ。


この気持ちがバレたら、側にいられなくなる。
いつかのバービーみたいに、冷たく突き放される。


どうしよう、そんなの嫌だ。


思わず体を強張らせた私を。
橘センパイはなぜか優しく抱き寄せた。