「この部屋寒いな…。
チエちゃん風邪引いてない?」


突然、大野センパイが私の顔を覗き込んだ。


…あれ。
何かおかしい。


あんなに怖かった暗闇からやっと出られて。
大好きな大野センパイが心配してくれて。


本当だったら嬉しくて堪らないハズなのに、何で私の胸はこんなに冷静なんだろう。
何で少しだけ残念な気持ちになってるんだろう。


「そいつは俺の服まで奪ってあったまってたから全然余裕。
むしろ俺を心配しろ」


横から口を挟む橘センパイに、


「お前、本当に寒がりだよな」


大野センパイが笑いながら学ランを貸してあげてる。