この男、偽装カレシにつき

「怖い…!」


こうなると、横にいるのがエロ男だろうと誰だろうと関係ナイ。
暗闇の中で一人でいるのだけは絶対に無理。


「お前っ。
ちょっと待て!」


私が全力でしがみつくもんだから、橘センパイも立ち上ることもままならない。


センパイには申し訳ないけど、許して欲しい。
私は鳥目の上に暗所恐怖症で。
何も見えない場所が、怖くて堪らないんだから。


「た、助けて…!」


「とりあえず落ち着けって!」


センパイはパニクる私を、ぎゅっと抱き寄せた。
突然の温もりにビクッと体を強張らせた私の肩を、センパイはまるで子供をあやすように叩く。


「ごめ…なさ…。
暗いの…本当に苦手で…」


体を奮わせたまま、センパイを見上げる。
どうしよう、声にならない。


そのとき、センパイの右手が私の頬に触れた。
センパイのあったかい指が頬をそっとなぞる仕草に、私は恐怖のあまり涙をこぼしていたことを知る。


そして次の瞬間、私は橘センパイに唇を奪われていた。