この男、偽装カレシにつき

「痛っ!」


額を押さえて叫んだ私を見て、橘センパイはぶはっと吹き出した。


「冗談に決まってんだろ」


じょ、冗談…?!


「期待してんじゃねーよ。
お前俊介が好きなんじゃねーのかよ。
気の多いオンナだな」


橘センパイは苦笑しながら、学ランを私に投げて寄越した。


「寒いならこれでも被っとけ」


え?
さっき私がくしゃみしたから、気にしてくれたの…?
橘センパイって、分かりにくいけど、実は結構優しいトコある…、じゃなくって!


「このテのことが、冗談になる人とならない人がいるんですってば!(アンタは後者)」


おかげでさっきからバクバク鳴り止まない心臓をどうにかしてよね!
内心文句を言いながらも、ちゃっかり学ランを羽織る私。