あー…、やっぱバイクは気持ちいいな……。
ヘルメットがなければ、もっと気持ちいいんだろうけど。
流石にそれは今やったらまずいよな。
「……この速さで平気か?」
「え?…あぁ、全然!」
前は、これの倍くらい出してたしな。
どうやら恭弥は俺のためにスピードを下げて走ってくれていたらしい。
「……ありがと、」
「あ?何か言ったか?」
「何でもねえよ」
何か、言いたくなった。それだけ。
暫く走っていれば、寮も見えてきた。
恭弥はバイクを適当な所に止めた。
「寮、でいいんだよな?」
「…は?今更?今更聞くのかよ!」
「…今思い出したんだよ」
けらけらけら、つい笑ってしまった俺に、恭弥は不機嫌そうに顔を歪める。
「…ちっ」
「悪ぃって!合ってるよ」
「…っそ。つかお前の笑顔、初めて見たんだけど?」
「……っ俺、笑ってなかったっけ」
「めんどくさそうな顔、不機嫌、S特有の笑み…、なら見たことある」
それ、笑ってねえな。
そっ、か、俺“まだ”笑えてないんだ…。
昔はかなりの笑い上戸だったんだけどな。
「俺、あんまり笑わねえんだよ。じゃあ、送ってくれてさんきゅ」
「……ああ」
恭弥とは寮の玄関で別れ、俺は一人中に入っていった。
