そうだ、間違いない。
俺を“優さん”と呼ぶのは、コウ───紅しかいない。
笹神 紅(ササカミ コウ)
蝶華7代目副総長で、所謂俺の先代。
その頃は髪、金に赤やら青やら色んな色のメッシュを入れていたけど、今は落ち着いた茶髪になっていた。
ふと俺の席が暗くなった。
顔を上げるとコウが少し寂しそうに俺を見ていた。
「授業終わったら、ちょっと良いですか」
「……うん」
流石に断れるわけねえだろ…。
それから授業で何をやっていたかなんて覚えていない。
覚えているのは男子も、珍しく女子も静かに授業を受けていたことだった。
「優哉あ?どうしたの?」
席を立つと、藤堂に話し掛けられた。
「いや、ちょっと…」
「優さん、」
「今行く。じゃーな」
適当に返して教室の外へ出た。スタスタと歩くコウ。
どこまで行くんだ…。
暫く歩いていると、コウが何かの教室に入った。
ここで話すのか…?
中に入るとその瞬間目の前が真っ暗になった。そして…温かい。
あ、俺…抱きしめられてんのか。
心配かけたもんな。
でも気になんのが、今男の格好だから…その、ゲイみたい。
「コウ…ちょっと俺らキモい」
「え?」
俺が遠慮がちに言えば、コウはすんなり離れた。
