そのあとの俺の動きは速かった。
速攻で1階に下りて本当にすぐあった職員室に入り、担任に寮の鍵をもらい、寮の場所を聞いた。
しかもだ、寮には迷わないでたどり着くことができた。
職員室にノックして入るなり、「この学校にノックなんてする生徒、まだいたのね」なんて感激された。
この学校、ここまで酷えのかよ。
涙流れにそんなこと言われたのは流石にビビったわ。
「っあー…!やっと着いた…」
ここの寮は何気に広い。流石私立だ。
ベッドがあればソファもある―――何でもあんだな。
俺は荷物(と言うほどないが)をソファに置き、ウィッグとメガネを外した。
すると、現れる本当の“あたし”の髪と顔。
黒に赤と青のメッシュ――――昔のままだ。
総長の、あの時の……。
「何でか、変えれないんだよなぁ…」
……否、変えたくない、の間違いか。
結局あたしは中途半端で、完全にはあいつ等から離れられないんだ。
手放したのは、あたしなのに。
皆、恨んでるだろうな……あたしのこと。
……繁華街、行こうかな。
この辺の治安とか把握しとかなきゃな。
あたしは制服から、黒いTシャツ、黒いパーカ、ダボめのジーンズに着替えた。
女ってバレたら色々めんどくさいからね。
「……行くか」
ウィッグは被らないことにした。
あたしの髪はそこまで長くないから、パーカのフードを被れば平気だと思う。
シークレットブーツを履いて―――よし。
あたしは暗闇に消えていった。
