そっとドアノブを回し、
ゆっくりと開けて中に入る。
校内は厳重な警備が敷かれているし、今まで不審者が侵入した話は聞かない。
とすると、先生か?
この小屋を勝手に使っていたことがバレたんだろうか。
しかしこの自由すぎるほど自由な学園で、怒られるということがあるのか?
僕は反射的にできるだけ気配を消しながら、“その人”がいるであろう部屋をのぞいた。
―――そして激しく後悔した。
誰にも知られたくなかった。
僕がこの学園で唯一休める場所。
先生ならまだよかった。
それが
よりによってこいつに…。
「あっ!!やっと来たな!!朝早くから張り込んで結構辛かったんだぜ!?」
「……。」
僕はロボットのように素早く、かつムダのない動きでその場を去…
ろうとした。
が、捕まった。
“そいつ”によって。
「ちょ、何で逃げんだよ。ずっとお前が来るの待ってたんだぜ!?」
「僕は待っていませんでした。」
「初めましてだよな?俺は水城悠真。よろしく!!」
そう言って差し出してきた右手をゆるりと避けて僕は答える。
僕はよろしくなんてしたくないんだよ。
「知ってますよ。この学園であなたのことを知らない人なんか1人もいないでしょう。」
そう、こいつは有名人。
大げさじゃなく、本当に学園内でこいつを知らないやつはいない。
それどころか
学園外でも人が集まってくるくらいの有名人だ。
いわゆる僕が最も関わることを避けてきた部類。
「そうか?ほら、自己紹介は初対面のときの基本だぞ!自己紹介してくれよ!」
輝いた表情をしながら水城悠真は言う。
どうやら僕の自己紹介を待っているらしい。
