家から学校までの通学時間は、2時間半。



高校受験は
なるべく遠い所を選んだ。


何が何でも知り合いが誰もいない所でなくてはいけないから。







偏差値が高く、校舎も綺麗なそこを受験し、

必死の勉強の末に僕はみごと合格を決めた。













立派な校門が見えてくる。


その奥にはまたデカい校舎。

この建物にどんだけ金かけてんだ。



敷地内には
綺麗に手入れされた温室や、
有名な彫刻家の銅像、
噴水やテラスもある。







僕の通っていた中学からこの学校へ来た人はいない。




それは地元から遠いからだけではない。








僕が通うこの学校


―――<私立海南学園高校>は、超有名な金持ちのマンモス校だからである。







まさかこんな所に
公立で無名の中学から来たなんて、誰も思わないだろうな。



実際 通っているという情報は堅く守っている。



それに知り合いがいた所で、人が多すぎて見つかる確率なんか低すぎる。




経済面で困っていないことも後押しして、人生の中における高校生活をここで過ごすことを選んだ。











1つ注意したいことは、


一般的に見れば誰もが羨ましがるこの海南学園で、

煌びやかな高校生活に憧れているわけではないということだ。




むしろその逆。

僕はこの学園で決して目立ってはいけない。