「なにせ、オフクロの持ってる服っつったら、役所で作らせた服だけだからなぁ。
人と会わない山ん中ならまだしも、電車とかちょっと無理だよなぁ。」


………え?


「そう……なの?」


てっきり、花柄とかのいかにも女性用ですっみたいな服の事を想像していた僕は、リョクの言葉に目を丸くした。


「うん。
オフクロの服って男性がほとんどだった、あの役所の中じゃ特注に入るちいさいサイズでさ。
んで、昔の事だしなぁ。
山用の服なんて自分で揃えるのもメチャメチャ難しかったらしくって。」