「いかねぇよ。」


抱擁と一緒にリョクがくれたその言葉は。


熱い吐息と一緒に、僕の指の隙間から僕の中へじわりと入り込んで。


閉じかけている僕の心に、光の花を咲かせた。


「………え………?」


その光のおかげで、リョクの言葉を受け取れた僕は少し遅れて、ゆっくりと目を開いた。


リョクの肩越しに、庭園の木々の緑が優しく僕の目に映る。


「どこにもいかねぇよ。」


リョクが、また僕の耳に熱く囁いてくれる。