花は野にあるように

「………野望、ね。」


てっきり笑うと思っていたリョクは、なんだかしみじみとした感じで頷きながら噛み締めるように呟いた。


そうして、朝露がまだ残っていた満天星の葉を通りすがりに揺らして、悪戯な煌めきを空中に生み出した。


「………いいんじゃね?」


そのまま沈黙を続けていたリョクが再び口を開いたのは、校舎の昇降口が近付いて来ていた時で。


油断していた僕は、振り返りながら問い返した。


「え?
リョク、なんて言ったの?」


「んー?
いいんじゃね、って言ったんだよ。
野望、上等だろ?」