俯いたままでリョクに手を引かれた僕は、さっきのおじさんと向かい合わせになる形で、通された部屋の大きな机を挟むように座った。


「んっと、それじゃ、話を聞いていくね。」


駅員さん……さっき、リョクが藤森さんって呼んでたかな?


その人が、書類みたいなのを広げながら僕達に声を掛ける。


「じゃ、まずあなたから。お名前は?」


藤森さんは書類を埋めるように、おじさんに質問を始めた。


僕の隣では、リョクがいつのまにか手にしていた携帯を手持ち無沙汰な感じに、もてあそんでいる。


それが僕にとって、とても長く感じる事になる事情聴取の始まりだった。