花は野にあるように

僕はあわてて、まるで親鳥の後を追う雛鳥のようにリョクの後ろ姿に向かって小走りに寄っていく。


ぬかるんだ道の上で、僕の足元が一瞬もたついたのを、前を向いたままだった筈のリョクがタイミング良く振り向いて僕の腕を取った。


「危ないぞ?
地面がぬかるんでいるんだから急いで歩くと転んでミキまで泥だらけになっちまうって。」


ちょっぴり笑いながらリョクはそう言って、腕を掴んだ手をそのまま滑らせて僕の手に合わせてくれる。


「転ばないようにつないで歩くか?」


悪戯っぽく訊ねたリョクは僕の答えを予想してなかったんだと思う。