「ん。
ちょっと空が………な。」


大分暮れかかってきている、校舎の上に広がる空を見上げながらリョクは歯切れ悪く呟いた。


「空がどうかしたの?」


オレンジ色に塗りつぶされていた空に、いつの間にか闇色の雲が混ざり込んでいた事に今さら気付きながら僕はリョクに訊ねた。


「んん。
ちょっと、上空の風が強いような気がしてな。」


まだ空を気にしながらも、リョクは僕を見て笑顔をくれる。


「ま、いっか。
帰ろうぜ、ミキ。」


うながされて、僕は頷いた。


リョクが何を気にしていたのかを、その時の僕は想像すらしていなかったんだ。