「なぁ、おっさん。何やってんの?」


突然、良く通る魅力的な声が車内に響いた。


それと同時に僕に密着するようにうごめいていた、あの手が。


消えた。



……え?



………リョク?



頑張って振り向きながら、おそるおそる目を開けた僕の目に飛び込んできた光景は。


中年のおじさんの手首を掲げるように持って、コワイ顔をしているリョクと、びっくりした顔をしているおじさんが、お互いの顔を見ているトコロだった。