チカンの手は、ゆっくりと僕の背中を撫でながら少しずつ場所を下へ向かって移動していた。


や……やだ。


身体をずらして、その手から逃げたいんだけど僕は両手で吊り革にぶら下がったまま、身動きもできない。


せめて声を上げなきゃ、と思うんだけど。


僕の身体は凍り付いたように固まってしまっていて、口を開く事も出来なくて。


ただ、背中を降りてくる手のすきにされているだけだった。


……やだよ。


気持ち悪いよ。


………誰か、助けて。


リョク!