沈丁花の花の薫りには、春の雨がよく似合うと思う。


明るいグレイの毛皮を敷き詰めたような空からさらさらとこぼれ落ちる雨。


ほんの少し肌寒かったんだけど、どうしてもすぐに教室への道を辿る気になれずに、花の薫りに満たされた中庭へと廊下を進んだ。


中庭では雨に降られながら花達が自分達の美を競い合うかのように揺れている。


ここに来ると何時だってホッと出来る。


今朝の痴漢の事も忘れられる……ような気がした。



『や、止めてくださいっ!』