「何で落ちないんだ…」
机や椅子を倒すことなく地に足をつけているかのように冬夜は不良たちの拳を避けていく。
一向に当たらない攻撃に不良たちは段々と疲労を見せ始めていた。
当たらない攻撃は必要以上に体力を消耗させる。
「そんな大振り、俺にはきかねぇよ!」
そんな不良たちとは対照的に冬夜は楽しそうに教室を逃げまわる。
拳を避けられて蹌踉《よろ》めいた不良の背中を軽く押して転ばし、後ろから殴りかかって来たのを体勢を低くして避ける。
そしてまた机の上に飛び乗った。
「これで、どうだ!」
しかし、それを待ち構えていた一人が冬夜の乗った机を蹴り倒した。
「うわっ!」
思わずバランスを崩して床に落ちたが、素早く体勢を整え立ち上がった。
だが、立ち上がると同時に後ろから腕を取られ動きを封じられる。
「やっと捕まえたぜ…」
「おとなしく殴られろ!」
じりじりと距離を詰めてくる3人を見ながらも、冬夜には焦っている様子が全く見られない。
それどころか何故か心底楽しそうに笑っていた。

