「それに、ヴァンパイアであること”だけ”に誇りを持ってるとしたら、あんたら個人としての誇りは持ってないのか?」
「……どういうことだ?」
意味が分からないというふうに首を傾げる不良たちに、冬夜は分らないならいいと言って一つため息をつくと今までと雰囲気を変えてニヤリと笑ってみせた。
「…誇りあるヴァンパイアが、あんたらの言うたかが人間に名前も覚えられてないのはどうなんだろうな?」
「おまえ、まだ俺たちの名前覚えてないのか…?」
「どうでもいい奴の名前なんか覚えてられるかよ。第一、毎回自己紹介してるわけでもないし、あんたらが一方的に俺のこと知ってただけだろ。」
付き合いといえるかは分からないが、一応冬夜が彼らと初めて会ってからそろそろ1年になる。
だが名前を覚えていないことよりも、冬夜の言った『どうでもいい奴』という言葉にきれたようだ。
「このっ…!調子に乗りやがって!」
言うが早いか、一斉に殴りかかってくる不良たちを、待ったましたと言わんばかりの笑顔で冬夜が迎え討つ。
一斉にと言っても、机や椅子が置いてあり大した広さもない教室では動きが制限され、不良たちから繰り出される拳は簡単に避けられる。
「そんなんじゃ当たらないぜっ!」
身軽な冬夜は器用に机の上を翔ける。

