「その好きな人ってのがおまえだ!悠妃冬夜!」
急に大声で名前を呼ばれた悠妃、改め冬夜はあからさまに顔をしかめた。
「そんなに叫ばなくても聞こえてんだよ。ったく、朝っぱらからうるせーな」
あえて聞こえるように舌打ちをして顔を背けた冬夜に、不良たちは明らかに苛ついているようだったが、それに気付かないふりをしてさらに冬夜は言葉を続ける。
「で?妹に好きな人が出来たって聞いて、それがあんたの嫌いな奴だったから難癖つけに来たってことでいいか?
別にあんたの妹が誰を好きになろうが関係無いだろ。いちいちそんなこと言ってたらきりがないぜ」
わざとらしくため息をつき、くだらないと呟いてやる。
冬夜の言ったことは佐藤にとって図星だったのか、返す言葉が浮かばないようだ。
「ぐっ…で、でも瑞希にはおまえみたいな人間じゃなくて、もっとしっかりしたヴァンパイアの方がいいに決まってる!」
取って付けたような反論にもならないセリフだったが、唐突に出た『ヴァンパイア』という言葉に冬夜の顔つきが変わった。
「へぇ…?おまえら混血か。大して人間と変わらない混血のヴァンパイアがそんなこと言うのか。」
それこそくだらない。

