「ここでいいか…」
保健室の入り口から一番遠いベッドに冬夜を下ろした龍は、近くにあった椅子に座り冬夜を見た。
全く警戒した様子もなく無防備に眠る姿に思わずため息が漏れる。
冬夜の目元にかかっている前髪を払ってやり、起こさないように指の腹で頬をなぞる。
整った中性的な顔立ち、スラリと伸びた手足に女性にしては高い身長。
喋り口調、普段の態度や服装を見ても本当のことを知らなければ冬夜が女性だとは思わないだろう。
「ったく。もっと警戒心を持ってくれ…」
頻繁に喧嘩をしている冬夜はその分、敵も多い。
負けたことはないらしいが、この間のように怪我をするのではないかと、話を聞いている龍はいつも気が気でないのだ。
寝ている冬夜に何を言っても意味は無いが、龍はもう一度大きくため息を吐き冬夜の布団を掛け直した。

