「…会わなくていい」

少しトーンを低くして会ってみたいと言った彩都に冬夜がため息混じりで言う。

「ところで、兄貴は何で家にいるんだ?大学は?」

 冬夜より2つ上の彩都は現在大学1回生だ。

「あぁ、今日の講義の教授が風邪引たらしくて。連絡があったんだ」

にこやかにそう言う彩都。

「そうなのか」

「あぁ」


話は終わったはずなのにいつまでも部屋から出ていく気配のない彩都に冬夜は仕方なく問いかけた。

「…まだ何かあんの」

「おぉ!わかるか冬夜」

わざとらしく驚いてみせる彩都は冬夜に向かって両手を合わせた。

「血、くれないか?」

 首を傾《かし》げて可愛らしく彩都に聞こえるようにため息をついた。

「またかよ…」

彩都は遼がいない時を見計らって度々《たびたび》冬夜から血をもらっていた。

「まぁ、別にいいけど…」

「ホントか!」

冬夜の言葉に目を輝かせて喜ぶ姿はまるで子どもだ。