「それで、怪我はどうした」
「治った。いや、…治された」
「は?」
不機嫌な声でいった冬夜は思い出したくもないという顔で言葉を続ける。
「保健室に行ったんだ。そしたら中に引きずり込まれて、後ろから羽交い絞めにされて…」
段々と冬夜の声が低くなっていく。
「そ、それで?」
「あいつ、いきなり舐めやがったんだよ!力じゃ敵わないってわかってて…!」
声を荒げてベッドを殴りつける冬夜に余程嫌だったんだなと彩都は思う。
「ま、まぁ、落ち着けって」
「…あいつ、龍って言ってた。怪我を治せるってことは純血なんだろ。兄貴何か知らないか?」
「そうだな…。確か神木家のがあの学校に通ってたな」
神木《かみき》は悠妃と同じく純血のヴァンパイアの家系だ。
「神木…神木龍」
忘れないように名前を呟く冬夜に彩都は内心で苦笑した。
他人にあまり興味がない冬夜は、名前や顔を覚えることが苦手なのだが、どうやら本当に悔しかったようだ。
「でも、俺も会ってみたいな人の妹にそんなことをした野郎に」

