「あんた誰だ…」
2度目の同じ冬夜からの問いに、男が応えた。
「俺は龍。俺はおまえの抱える秘密を知ってる」
動かなくなった冬夜に最後にもう一度、舌を這わせるというより唇を寄せてから龍《りゅう》は拘束を解いて一歩下がった。
「俺の秘密だと?」
拘束を解かれた冬夜は龍と真正面で向き合い、その顔を思い切り睨みつけた。
しかし、龍はそんなことを微塵《みじん》も気にした様子はない。
「あぁ。本当かどうか確かめたければ俺のところに来い」
龍は言いたいことだけ言うとじゃあなと冬夜に軽く手を振り、引き止める間もなくさっさと保健室を出て行ってしまった。
「何なんだよ。あいつ…」
1人取り残された冬夜は龍の出て行ったドアの方を見てため息をついた。
前髪をかき上げて上を向く。
そのときに頬の傷が痛まないことに気付いた。
慌てて傷口に触れるが怪我自体がなくなっているようだ。
保健室にあった鏡で確認してみても、血の跡が微《かす》かに残っているだけで傷は塞がっていた。
「まさか…」
傷を治す力を持つのは純血のヴァンパイアのみ。
「あいつは純血のヴァンパイア…?」

