「どわあああっ!?ちょ、待、何!?何!?」

いきなりの出来事に、ロゼットは情けない声をあげ、とび退(すさ)った。
その勢いで尻餅をつく。

床にかてぇ。痛い。

勝手に痛がり勝手に悶えるロゼット。
彼の耳に、カツン、という音が届いた。
涙目で顔をあげ、開けられた扉を見る。

偉そうに腕を組み仁王立ちする、エメラルドのバッスルドレスの女性。

「…ソーン…っ」

「何だロゼット、起きていたのか」

ユークイン王国の白薔薇姫、ソーンのご登場である。

ツカツカと部屋の隅でうずくまるロゼットに歩み寄る。

「ロゼット、おまえ何故(なにゆえ)にそうしている?」

「お、おまえがいきなりドアをバーンって開けるから、驚いて…」

「男の癖に情けない」

ごもっともです。
いや、やかましい。

「ノックくらいして欲しかった。つか、しろっつの」

鈍痛をこらえ、文句を言いながらロゼットが立ち上がる。

ソーンは何に気付いたのか、柳眉をひそめた。

「…え、なに?」

彼女の機嫌を損ねるようなことをしてしまったのだろうか。
ロゼットは不安になった。
理不尽な理由でも真面目な理由でも、彼女の怒りに触れるのは怖い。
前者は防ぎようがないものではあるのだが。

「…服、どうした」

「へ?服?」

呆けた声を出し、ロゼットは自分の服を見た。
そういえば、寝間着のままだ。
これが彼女の怒りに触れたのだろうか?

「ご、ごめん、すぐ着替え」

「そうではない」

「へ?」

二度目の呆けた声を出した。
呆けた声を出すのは一人前である。