それからしばらくしたのち、ソーンは王子を見送り、自室へは行かず、縁談のあった薔薇庭園へと向かった。 ――そこには、先程は無かった人影があった。 赤薔薇のような髪色の、男性。 ソーンは遠目でもそれが誰だか気づけた。 目を細め、その名を呼ぶ。 「…ロゼット…」 男性は、軽くお辞儀をしてみせた。 「…私を待っているような気がしましたので、お呼びが掛かる前に参上いたしました、白薔薇の姫」 その言葉に、ソーンは微笑した。