ソーンは辺りを見回した。
焦点を合わせたのは、ロゼットが拾おうとした、シルクのシャツ。
ソーンはそれを手に取り、ロゼットを見た。

「コレに着替えず、その安物で寝たのか?」

訊くソーン。
他人が聞けば貴族の不快な発言だが、彼女はこういう言い方しかできないのである。
それをわかっているロゼットは、至って普通に答える。

「ああ、うん。それは着心地が悪くて…」

言い、ロゼットは気付いた。
わざわざ彼女(の召し使い)が用意してくれた、上質なそれを着ずにいたのを忘れていたのだ。
おまけに床に放っていた。
好意を無下にしたも同然。
最低である。

「そうだっか。…では、違うものを用意させよう」

土下座でもさせられるのかと思っていたが、ソーンは特別気にしていないようだった。
安堵の息がもれる。

そして、ロゼットは首を横に振った。

「いや、有難いけど、いいよ。俺にお貴族様の服は、本当合わねえんだ」

ソーンは一瞬きょとんとした表情を浮かべた。
だが、すぐに高慢な表情に変わる。

「そうだな。おまえには、薄汚いそれの方がよく似合う」

「それは酷すぎだと思いますが」

ロゼットは溜め息をつき、言った。