海里が隣にいない事で不安定だった私だけど、まりあや蓮、
そして何よりお腹の中の赤ちゃんのおかげでだいぶ気持ちが
落ち着いて来た。
後ろ向きだった私に前を向く道を照らしてくれたのは、赤ちゃんの存在が
大きかった。

まさに“希望”とはこの事だ。
“身体を冷やさないように”と母親のようにまりあに叱られながらも
妊娠9週目になり、お腹もだいぶ大きくなった。
赤ちゃんがお腹を蹴るのが分かるようになり、1つの命が生きてるって
すごく実感できる。
早く生まれないかなぁ…名前何にしよう…
そんな事を考えながらも時が経つのは早く、予定日が近づいた。

「美奈!がんばってね☆赤ちゃん、美奈の次に抱かせてよね」
「うん、かわいがってあげてね」
分娩室に入り、赤ちゃんが出てくるのを痛みに耐えながら必死に待った。
あれからどれくらい時間が経ったのだろう。
元気な産声を上げついに赤ちゃんが生まれた!
「やったぁ」
安堵の表情で赤ちゃんを助産師さんから受け取った。
「海里にホント似てるねぇ」
赤ちゃんに優しく話す。
何とも愛らしい可愛い表情をしている。

ようやく、退院の日が来た。
表ではまりあが待っていてくれ、赤ちゃんを連れ病院を後にした。
「名前考えたの?」
赤ちゃんのほっぺを指でつんっと指しながら聞く。
「うん。愛海がいいなって」
「愛海?」
「うん、私が海里にたくさんの愛をもらったようにこの子にもたくさん愛をあげれたらいいなって。あと海里を忘れないように、海里から一文字もらって、愛海」
「めっちゃいい名前じゃん!美奈の優しさが込められた名前だね」
「そう?ありがとっ」
愛海やまりあや蓮…
数え切れないほどたくさんの人に支えてもらってここまで来れた。
だから今度は、私がみんなの支えにならなきゃ。