そう話しかけてきたのは新入社員の美紅ちゃん。
…今時の若い子オーラが満点で、少し苦手だと思っていることは内緒だ。



「その指輪!結婚指輪ですよね?」


「あ〜…、これはそんなんじゃないの」


私は左手にちらりと視線をやってそう答える。
すると美紅ちゃんは不思議そうな表情を浮かべたままで。



「………好きな人とお揃いってところは結婚指輪と同じだけど、その人にはもう会えないから」


普段なら適当に誤魔化すのに、美紅ちゃんの純粋な疑問の瞳に気づけばそう答えていた。