余りに違和感のない室内の様子に、俺は血の気が引く思いがした。
…戻ってきた?
自分のあるべき世に、戦乱の世に。
―――あかり。
その名を心で叫びながら胸元を掴むと確かに革紐と指輪の感触がして、あれが夢でなかったことを知る。
「―――半兵衛!目覚めたんだな」
どたどたと喧しい足音が部屋の前で止まったかと思うと襖を開ける音。
それと同時に聞こえたのは、この戦乱の世で俺と同様軍師として名前の知れている男―――黒田官兵衛の声だった。
「官兵衛。…私は」
「お前さんは滝壺に落とされて、それから今まで眠りっぱなしだったんだよ!」