もう、会えないのに。 声も聞けないのに。 竹中さんはとんでもないものを置いていった。 ―――もういらないと思っていた感情。 もう誰もくれないと思っていたもの。 そして、間抜けな私は今更気づくんだ。 …私も同じだと。 あの綺麗な笑みが、揺るがない眼差しが。 私をこんなにも揺さぶって離してはくれなくて……… 「…―――ッ!」 こんなに惹かれていたと気づいても、伝える手段もないのに。 私はその場でぼたぼたとみっともなく泣いた。