「明日は逃げませんよ?」


「…わかっている」


子供のような言い方にくすっと笑ってしまった私を玄関から押し出して、竹中さんは珍しく声を荒げた。



「………いいから早く行け!走って転ぶなよ!」


「わかりましたよ…じゃいってきます!」


そう返すと私は小走りで階段に向かった。
竹中さんは小さく息をついて薄く笑う。


その表情が最後だった。


竹中さんを見た、最後だった。