咄嗟に書物を床に放ち、口元を手で覆う。 その次の瞬間息苦しさと共に咳がこみ上げてきた。 がらんとした室内に響くその音に、俺は絶望に近い気持ちになっていく。 …ここで、死ぬのか? …こんなところで、主のためなどでもなく、独りで? 「―――誰、か…たす………て…」 意識が薄れていく中で、遠くからがちゃという音がする。 死神か、はたまた天女か。 今の俺には判断の仕様がなかった。