「いいなぁ、彼氏…」
ボソッと呟くと、「聞き飽きたよ…」とアユからの返事。
この通り、私には彼氏がいない。出来てもすぐ別れちゃうんだ。
だって付き合った人みんな、
「チャラいんだもん…」
「…あんたがね」
すかさずアユからツッコミをいただいた。
いやいや、私はチャラくなんてないよ!相手がだよ。
「ていうか…ちゃんと好きになったこととか、あんまないんだよね…」
自転車に跨がりながら、フッと笑ってみせる。
でもこれは本当なんだよなぁ。
「まだまだこれからじゃん!アユみたいに、アツシだけだ!って思えるような人、みぃにもきっと見つかるよ」
「…そうかなぁ」
「そうだよ!」なんて言い合いながら、この時は恋愛の話が終わった。
「アツシ」―――……
顔も知らない、アユの彼氏。
後に、私の「大事な人」になるなんてね…。
「アユ」―――……
大事な大事な親友なのに
あんなことになるなんてね…。
…この時は想像もつかなかったよ。
そして「――」―――……
ありがとう、心の底から感謝するよ。
その出会いは突然に、本当の始まりだった。

