「・・・誰かいるのか？」

放課後はのんびり屋上でと思って来た。
かすかに、だが子守唄のように優しく綺麗な歌声を聞いてそっと扉を開いた。

　　「あれは・・・？」

歌っているのは確か隣のクラスの“終夜蓮”。他の男子や女子が色々と噂をしていた。
噂は時として、真逆な事もある。
だから、そういう噂は頼りにしない。
実際に見なければそいつがどんな奴か分からないからだ。
しかし・・・

　　「噂どおりというのは、こういうことか・・・。見掛け倒しという事ではなさそうだな」

噂では美人でかわいくてかっこいい。そして、桜岬高校の歌姫だと・・・。
まさにそのとおりだった。
聞き惚れてしまいそうなほど美しく、心が安らぐほど神秘的な歌声だった。

　　「邪魔しちゃ、悪いか・・・」

“彼”は名残惜しげに屋上を後にした。