『さようなら、悪しきモノたち____』
先刻まで居たどす黒く君の悪い生き物は、もう居ない。
《もう、よいのか》
木の陰から現れたその白い猫のような獣。
大きさは肩に乗るくらいだ。
『弔(トムラ)いは後だ。先を急ぐ』
《本当に居るのか。お主の探す相手は》
『居なくともここには来ていた。今、もっとも陰の気が渦巻く場所だ』
《古都・京。懐かしいの・・》
白い獣がそう呟くのを驚いたように近くに居たソイツは聞き返した。
『来たことがあったのか』
《昔じゃ。》
こいつが言う昔は、本当に昔。それはもう、人間が生きていける年月を遥かに超えた、時間を指している。


