そこにある宇宙

 疾風はバカだが真面目だ。

 発明のために犠牲を払うことはやむを得ないと考えている。

 だが、それは自分が払う犠牲に限っての話だ。

 何度か転送実験を成功させており、疾風はその技術を確立させつつあることは間違いない。

 ただし、この世界の中でという制約がつく。

 次元を越えての転送など、理論も技術も未知の領域だ。

 成功するかどうか全く分からない。

 それどころか、命の保証すらない。

 そんな手探りの行為に、他人を巻き込むわけにはいかない。

(そういうヤツなんだよね、こいつは)

 他人の、異世界の話なのに、一人で全て背負うつもりでいる。

 カッコつけているわけではない。

 ただ、「犠牲を払うならまず自分から」という信条に従っているのだ。

(こんなバカの、どこがいいんだろう)

 我が事ながら、疾風の何が人を引き付けるのかルイにはさっぱり分からない。