「向こうの世界で起きてる惨劇は、誰にとっても不幸なことだ。それを解決できる手段があるんなら、俺は行くよ」

 ゲート型の転送装置に光が満ちる。

 が、すぐにその光が弱くなる。

「まだチャージが足りないな」

 そう言って、疾風はレバーを戻す。

「これ、転送できるのは一人なの?」

 疾風の迷いひとつない眼差しに、ルイは本心を語れない。

 それでも、燻る思いを伝えようとする。

「異世界の天神学園は龍太郎が支配してるんでしょ?こっちも戦力集めた方がよくない?」

 連れて行って、とは言えない。

 ルイはそういう性格だ。

 それに、言ったところで疾風は首を縦には振らないだろう。

「せめて、戦力になりそうな人を連れて行くとかさ」

「簡単に言うなよ」

 ほとんど即答だった。

「一人転送するだけでも大事なのに、集団なんて途方もない話だ」

 次元の境界に穴を開け、そこから人や物を送り込む。

 言葉にすれば簡単そうに聞こえるが、それは容易いことではない。

 境界に無理矢理穴を開けるだけでも、疾風の頭脳と技術をもってしても至難の技だ。