ルイの気持ちを知ってか知らずか、疾風はゴツいブレスレットのような物を見せる。

「こいつは転送装置の遠隔操作端末なんだ。この研究室にあるメインシステムにアクセスして、セットしてある装備品を呼び寄せるのさ」

 目的がどうあれ、発明品を披露する時の疾風は溌剌としている。

 ふと、疾風はルイに視線を向ける。

「…なに?」

「行くな、って言いたいんだろ」

 ブレスレットを左腕にはめながら、疾風は言う。

「転送装置は完成した。これで、確実に異世界の天神学園に行くことはできる。だけど、こっちに帰ってこられるかどうかは分からない」

 疾風の言葉は、正解ではある。

 だが、ルイが疾風を引き留めたい理由はそれだけではない。

「夏休みの時は、仲間を逃がすために仕方なかったって言ってたよね。兵器を作ることは発明家として最低の行為だって」

 ルイの言葉も、真意からではない。

「そうだな、こんなものを作った俺は発明家失格だ」

 やはりルイの気持ちをはぐらかすように、疾風はあらぬ方を向いて言う。

「不本意だよ、こんなことに頭を使うのは。だけど、発明は人を幸せにするためにあるんだ」

 その手が、せわしなくコンソールを操作する。

 続けて、脇にあるレバーを出前に引く。