「え、な、何?」



「・・・・・携帯」



颯人に初めて手をあげた原因。
私の携帯は、電源が入ってない。
だけど、常に持ち歩いてる。

・・・・・私の携帯には秘密がある。




「・・・私の・・携帯は・・・」




「・・・うん。
あの時から、変だなって思ってた。
言って?もしかしたら、解決してあげられるかもしれないし」




・・・・私の携帯は、電源をつけるとひっきりなしに着信がくる。
携帯会社に持って行っても原因はわからなかった。
解約するにも、できなかった。

・・・この携帯は小学生の頃から使ってる。
壊れたら修理に出す。
それの繰り返し。
どうしてそこまでして、この携帯にこだわるのか。
・・・・彼への唯一の連絡手段だから。
初恋相手の“颯人”とは、ずっと仲がよかった。
お互いの家で遊んでいたり。
だから、彼の電話番号を知ってる私。

もう、かけることはない。いつまでも引きずってちゃダメ。
もう昔のことなんだから。

そう思って、何度消そうと思ったか。

・・・・・でも、いつも消せなかった。

消してしまうと、彼の存在も私の中で消えてしまう気がしたから。




「・・・・怖くて・・・・でもっ・・・誰にも相談できないしっ・・・」



颯人は静かに、私の頭を撫でて話を聞いていた。
親とは音信不通。
友人も電話帳が開けない状態だから、連絡もできない。
田舎から、都会で何も持たずに出てきた私に相談できる人なんていない。
会社でも、黙々と仕事をこなすだけ。
元々、人と関わることが苦手な私は人に話しかけたりできない。
人前で話したりすると、言葉が出なくなってしまったりする。



「・・・携帯、解約しよう?」



「っ!
やだっ・・・・・・!」