取っ手を握る私の左手を包むように握り込んだ男の手。

そのままドアを開くことを静止され体が硬直する。


背後から響くトーンの低めな声には聞き覚えがあった、気がした。


「…帰ります」


平常心を装って答えるも、ある種の恐怖で後ろを振り向けない。

…まさか。


「なんだ冷たいな。…昨夜はあんなに甘え強請って来たのに」


その言葉はオトナのなんたらを確証していた。

顔が一気に熱くなって羞恥心を取っ払うように私の手を握る男の手を振り払う。


振り向いて視線を上げるとやはりそこにいたのは宮本先輩で。


「……先輩ここでなにしてるんですか」


まだ少し寝むそうな表情の宮本先輩の頭はまだフル活動していないんだろう。

「ん?」と私の問いを咀嚼するように少し間を置いて、楽しそうに笑った。


「滝沢と一緒のことしてただけだけど?」


「……」


「っていうかここ俺の部屋」


追いやったはずの先輩の手はするすると私の腰に回ってお腹辺りをゆるく撫で回す。


「お…っ、おかしくないですか先輩…!」


「なにが?」