「ぼくは外科専門です、って言ってたら、食っていけないよ」
「すごいなあ。覚えることって山ほどあるでしょうね」
「でも、広く浅くかもしれない」
車は新緑が鮮やかな山道を上り始めた。車のエンジン音が大きくなり、「頑張れ」って声をかけたくなる。
「あのう」
「ん?」
「ルーメンって何ですか?」
「え?」
「専門用語ですか?」
「うん。なんで知ってるの?」
「浅井さんの本に書いてあったのを見ました」
「そう。ルーメンは第1胃」
「第1胃?」
「牛には胃が4つあるんだ。一番大きな胃が第1胃」
「そうなんですか」
この単語はずっと気になっていたので、頭の片隅でモヤモヤしていたものが消えて楽になった。
酪農家に着いて車から降りるとブルーのつなぎを来て赤いキャップを被った若そうな男が近づいてきた。
結子をチラリと見ると「先生!今日は彼女連れて診療ですか?」と微笑んでいる。
「バカ野郎!」
浅井が結子のことを紹介すると酪農家は「清水です」と言いながら頭を下げた。清水は中肉中背でどちらかと言えばジャニーズ系の顔をしていた。
(酪農家ってこんなにカッコいい人がいるの?)
「診察してくるから待ってて」と言うと浅井は聴診器を首からぶら下げながら細長い長方形の牛舎の中へ入っていった。
結子が牛舎の入り口から中を覗くと牛舎の真ん中ぐらいで牛に聴診器を当てている浅井と通路でその様子をじっと見ている清水の姿が見えた。
真ん中の通路を挟んで対面状に白黒模様の乳牛たちが奥まで繋がれていた。片側30頭として全部で60頭ぐらいはいるかもしれない。
「すごいなあ。覚えることって山ほどあるでしょうね」
「でも、広く浅くかもしれない」
車は新緑が鮮やかな山道を上り始めた。車のエンジン音が大きくなり、「頑張れ」って声をかけたくなる。
「あのう」
「ん?」
「ルーメンって何ですか?」
「え?」
「専門用語ですか?」
「うん。なんで知ってるの?」
「浅井さんの本に書いてあったのを見ました」
「そう。ルーメンは第1胃」
「第1胃?」
「牛には胃が4つあるんだ。一番大きな胃が第1胃」
「そうなんですか」
この単語はずっと気になっていたので、頭の片隅でモヤモヤしていたものが消えて楽になった。
酪農家に着いて車から降りるとブルーのつなぎを来て赤いキャップを被った若そうな男が近づいてきた。
結子をチラリと見ると「先生!今日は彼女連れて診療ですか?」と微笑んでいる。
「バカ野郎!」
浅井が結子のことを紹介すると酪農家は「清水です」と言いながら頭を下げた。清水は中肉中背でどちらかと言えばジャニーズ系の顔をしていた。
(酪農家ってこんなにカッコいい人がいるの?)
「診察してくるから待ってて」と言うと浅井は聴診器を首からぶら下げながら細長い長方形の牛舎の中へ入っていった。
結子が牛舎の入り口から中を覗くと牛舎の真ん中ぐらいで牛に聴診器を当てている浅井と通路でその様子をじっと見ている清水の姿が見えた。
真ん中の通路を挟んで対面状に白黒模様の乳牛たちが奥まで繋がれていた。片側30頭として全部で60頭ぐらいはいるかもしれない。
