昼休みに真衣と近くの喫茶店に入り、二人とも日替わりランチを注文した。
 梅雨に入り、しとしとと雨が降る毎日だった。
 窓の外を見ると店の周りに植えられている木々の葉が雨に打たれて弾んでいる。
(今頃、何してるのかな?)

 結子は大きく溜息をついた。
「ふふっ」と真衣が笑った。
「何?」
「恋煩いも辛いわね」
「バカ」
「あれから、どうなの?」
「うーん。特にないけど。1つだけ」
「え、何?」
「彼の携帯が鳴ってね。よく聞こえなかったんだけど。はすい、とか言ってて、急いで出て行ったの」
「はすい、ってお産する時の?」
「やっぱり、そうかな」
「ということは、産婦人科のお医者さん!?」
 二人とも顔を見合わせた。

「でも、医者には見えないんだけどなあ」と真衣は首を傾げた。
「ルーメンとアンモニアって、関係あるのかな?」
「専門用語かもしれないわよ」
「そうかな」
「・・・結子!」
「え?」
「私にまかせて!」
「何を?」
「今日、一緒に行こう」
「いいけど。何するつもり?」
「いいから」と言うと真衣は微笑んだ。