「ちょっと、待ってて」

「ああ」

キッチンに消えていく、小さな後姿。

それが、とても可愛かった。

「今日は、ハンバーグだけどいい?」

「ああ サンキュな」




〔梓〕
竜也のはにかむような笑顔に何故かドキンとした。

「どうした?顔が赤いぞ」

「えっいやっなんでもない」

「なら、いいけど」

少し慌てながら、エプロンを結びながらあたしは用意をする。

静かなキッチンにあたしが、食材を刻む音だけが響く。

「なぁ、」

「何?」

「お前さ、寂しい時は俺を呼べ」

「えっ」

「俺がお前を悲しませない」

竜也の言葉が、さっき止まった涙を誘う。

手元が涙で滲む。

「何泣いてんだよ」

いつの間にか、キッチンにきていた竜也が優しく涙を拭う。