「いつかちゃんはさ、大学生活の最初から12月末までの記憶が失くなって、勉強も追いつかなくて、友達に話しかけられても誰かわかんなくて、すっごく不安で、ストレスを感じてたと思うんだ。
そのストレスの他にさ・・・”この人はキミの恋人だよ”なんて、自分の知らない異性を紹介されたら・・・どうなっちゃうか分かるかな?」


「あ────………」



自分の恋人を忘れたなんてことを、いつかがもし知ったら。
きっと自分の身を削ってでも、思い出してあげようと考えるに違いなかった。


色んなことが積み重なった上に、またそんな重圧を押し付けたら・・・
きっといつかは、その重さに耐えかねて潰れてしまってただろう。





「・・・木原・・」



なんて、いい奴なんだろう。




「アタシ、何か木原のためにしてあげたいです」
「ふみくんの?・・・そうねぇ、やっぱり出来るだけ笑わせてあげるのが一番だと思うわ」
「笑わせ・・・?・・木原ってあんまり笑わないタイプですけど・・」




加奈先輩はクスクス笑った。



「そうね、確かにあまり笑わないけど・・少しでも楽しくさせてあげるのがいいんじゃいかしら?」
「そうだよ、陽子ちゃん。文人の気持ちを軽くしてあげるっていうのがいいと思うな」



二人は優しいなあ。
後輩のことをいつも見守っててくれるような暖かい感じがする。



「できるだけ頑張ってみます!」