手を伸ばせば、届く距離まで。




じっと見つめるその目は、どことなく悲しげだ。


橘が「はよーざいます!」と姿勢を正す。


愛桜はちらりと見、さして興味なさげに視線を戻した。


…何だ?


「佐原真樹。ちょっと話がある。来られよ」


…未だにそんな口振りだから、昇進出来ないんだよ。


「先輩…天宮じゃなかったですっけ?」


橘が確認してくる。


「まあな。もう言ったって聞きやしないからな」